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Shi-jima Trip 久高島 #001「なにもない島」

2017.06.13      Translation of author 日本語

その島はたえず、あまい果実のにおいがしていた。

きっとそれほどとおくはない南の海で、台風が発生した影響だろうか、
湿り気をふくんだ重たい空気をのせたまま、フェリーは久高島についた。

島に行く前にお参りするとよいと聞いた、本土にある聖地の斎場御嶽(せいふぁーうたき)を参拝していたとき、
ざあっと夏らしい激しい雨が降って、足下がぐずぐずにぬれて気持ち悪かったので、島に着くとやむなく私は裸足になった。

港で地図を片手に島の空気を吸う。
久高島は沖縄本島からフェリーで20分の太平洋にある小さな島だ。
そして、琉球の創世神であるアマミキヨが降り立ったといわれる聖なる島であり、
島で生まれた女性は代々、祝女(ノロ)として神事を司る。

しかし、後継者不足のためにこうした伝統は失われつつあり、
十二年に一度、うま年に行われていた祭り「イザイホー」は、1978年を最後に、現在は行われていない。

 

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港から歩いてすぐのレンタサイクルの店に行く。
やけに店内が薄暗いと思ったら、停電しているのだという。
復旧工事が行われていた。

店の周りにはねこがたくさんいて、えさをもらっているのに、どれもぼさぼさと毛並みが悪くやせている。
人にはなつかず、うす青い外国人のような目をして、のそりのそりと人を避けて歩く。

やすやすと打ち解けそうにはない彼らを見ているうちに、ずいぶん遠いところに来たものだと思い知る。

 

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島を自転車で巡る。
ぐるりと一周しても、2時間程度しかかからない小さな島だが、小学校や中学校はおろか幼稚園まである。

ひとけもなく、雨の後で空気が澄んでいるからか――あるいは、ここがふつうの島ではないからか――、とてもしずかだ。

同じ船で島に来ていた韓国人の青年とすれちがう。
おそらく大学生くらいだろう、家族で来ているようだが、少し困った顔で所在なさそうにしていた。
何しろ、この島は何もないのだ。見るべき観光名所も、おいしいグルメも、はなやかなレジャーも。

 

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青年は、なぜ私が裸足なのかと聞いてきた。
単に靴がぬれて不快だったからに過ぎないのだが、
気がつくと私は、ここが神の島であり、古来の信仰に敬意を払って裸足になっているというようなことを饒舌に話していた。

この島にとっては私も彼も同じくらい部外者なのに、外国人を前にしてとっさに日本という同族意識が芽生えたからなのか。
浅はかな知識でそのような説明をすること自体、島の神様に笑われそうだけれど、
ずっと昔に失われてしまった日本の、あるいは、人類の、自然信仰を基盤にした素朴な文化に心ひかれて旅を続けていた私は、
自分自身もこの島に属した存在として語りたくなったのかもしれない。

 

 

 

 

 to be continued…

 

 

 

 

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