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アオガシマトリップ#007「青ヶ島の神々」

2015.05.28      Translation of author 日本語

 

翌朝、島内に定期船「あおがしま丸」の就航予定を伝える放送が流れた。そんな放送が流されるということに、島の生活における定期船の影響力の大きさを感じながら、八丈島で待機している井島さんにメッセを送った。井島さんも「あおがしま丸」就航の情報はすでに知っていたが、「あおがしま丸」がわりと“揺れる”という情報も得ていたようで、そのことを少し(いや、かなり)心配しているようだった。とはいえ、なんとか井島さんも青ヶ島に来ることができそうだ。

朝食を終えるとひとりで東台所神社を目指した。しかしながら、その参道である玉石段があまりにも急斜面で登りきることができずに挫折した。撮影機材を持っていたこともあり、登ることはできても降りられなくなる気がしたからだ。(後になってから、登ってしまえば迂回ルートから下りられるのだと聞いたが、その時は知らなかった。)残念ながら東台所神社にたどり着くことはできなかったが、その参道である珍しくも美しい玉石段を舐め回すように撮影した。そしてその後、ヘリコプターの到着時間に合わせてヘリポートへと向かい、そこで村田さんと合流した。

 

 

ヘリポートには島から出る人とその見送りの人、そしてお出迎えの人々が集まっていた。村長さんも駐在さんも来ていて、村人同士で冗談を言い合ったりふざけ合ったりしながら談笑している。やはりこのヘリポートでのお出迎え&お見送りは、この島で毎日行われる恒例行事のようだった。

ヘリコプターで島を後にする星空観測ポイントへ連れて行ってもらったTさんへの挨拶もそこそこに、カメラを定点にセットする。そしてヘリコプターの到着~離陸までを動画で撮影した。ヘリコプターは僕らが乗ってきたときとは逆の方向からやってきて人と荷物を下ろし、新しい人と荷物を載せると向きを変えることなくそのまま離陸していった。どうやらヘリコプターが飛んでくる方向は毎回同じではないようだ。聞いたところでは常に風上に向かって離着陸するということらしい。

 

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ヘリコプターが行ってしまうと、村田さんがヘリポートで知り合った廣江さん(この島には廣江さんはたくさんいる)に金毘羅神社を案内してもらうと言うので同行させてもらうことにした。実は僕と村田さんは前日にも金毘羅神社に行っていた。しかし、いまいち神社の構造がよくわからず、どうお参りしていいのかも半信半疑のまま帰ってきてしまっていたのだ。

そもそも絶海の孤島である青ヶ島は歴史や文化も独特だ。お屋敷の中や山の上など、島中のいろんなところにイシバサマと呼ばれる祠や尖った石や御幣などがあり、それぞれが神様として存在しているらしいと知ったのは昨晩のことだった。宿に置いてあった本にそう書いてあったのだ。そうだとすれば初日に丸山の頂上にあった祠もイシバサマに違いなかった。そして神社も本土で見るような一般的な形態はしておらず、境内にイシバサマが点在しているらしかった。

金毘羅神社はヘリポートのすぐ先に在る。廣江さんについて鳥居をくぐって社に向かう途中、右手に折れてうっそうとした木々をかき分けるようにして小道を進む。するとそこにイシバサマがたくさんあった。その一番手前付近にあったひときわ立派な祠に惹きつけられた。それは太陽の神様だと廣江さんが教えてくれた。

廣江さんに教わりながら、それらのイシバサマにお参りをさせてもらった。ろうそくに火をつけて線香を焚いて、イシバサマをひとつひとつ拝む。それが青ヶ島のお参りのスタイルだった。

迂回しながら奥に延びるイシバサマの並びの一番先端はとても景色のいい場所だった。並んで立っているイシバサマの視線に立ってみる。“風の足跡”を見ることができるほどびっしりと生えたビロードのような草原が美しいジョウマンと呼ばれる台地と、その先に大海原が見渡せた。風がとても心地よい。

 

 

その大海原に見とれていると廣江さんが「水平線は目の高さに来るんだよ」と言った。「しゃがんだらしゃがんだ目の高さ、立ったら立った目の高さ」と言った。「そうなんですね」と答えると、廣江さんは「そう、水平線はいつも目の高さにくるんだよ」とまた言った。

何度も言うので、それがなにかの比喩のような言葉で、言葉の裏に別の深い意味でもあるのかな?と思ったが、特にそういう訳でもなさそうだった。そして僕は「そうなんですかぁ」と同じように繰り返しながら、女性に対してこんなことを思うのは失礼かもしれないけど、廣江さんの顔はマラドーナによく似ているな、と全然関係ないことを考えていた。

 

 

 

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