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アオガシマトリップ#006「カルデラと星空」

2015.05.21      Translation of author 日本語

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しばらく三宝港を散策した後、車に戻り来た道を引き返す。再び、「青宝トンネル」を抜けるとそこはカルデラの内側で、またがらりと空気感が変わった。荒々しい雰囲気の“外側”から“内側”に入ると風はやみ、青々と植物が茂る優しい雰囲気になり、光の色までやわらかく違って見える。

カルデラの外側と内側の変化はどこまでも印象的だ ――――――。

そんなカルデラ内を散策したくて道案内のある分岐点からサウナ方面に進んでみる。要所に出ている道案内を頼りに進んでいくとサウナの場所はすぐにわかった。それは火山の地熱を利用したサウナで、近くには同じく地熱を利用して塩を作っている製塩所や、無料で使える地熱釜もある。丘の上にはベンチなども設置されている。池之沢地区と呼ばれるこのあたりではいろんな場所から地熱で熱せられた水蒸気が噴き出している。辺りの地面を触ると温かく、植物は雑草程度しか生えていない。

 

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大凸部から見たときに、そこだけ緑が無く土がむき出しに見えた島の中央に近い部分が、今いる場所かなと考えたときに、頭の中で島の全体像がつかめてきている手ごたえを感じた。何となく全体像がつかめてきたら、あとはイメージしながら歩くのが知らない場所で空間把握をするには手っ取り早い。

内輪山である丸山には、サウナから歩いて10分程度で登ることができた。登り切ったところには鳥居のある祠があった。手の込んだきれいなイメージの祠ではなく、鉄製の小さな鳥居や割れた瓶などがたくさんあり雑然としていて寂れた雰囲気だ。でもどこか人の情がこもっているような温かさがあり、惹きつけられた。辺りにはいつまでもそこにいたくなるような気持ちのよい空気感が漂っている。

 

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丸山の頂上付近は内側が窪地になっていて小さいながらカルデラ地形だ。その峰沿いに散策できそうな道が伸びているので行ってみる。青々と植物が茂っているがうっとうしい感じではなく、程よく湿り気のある風がとてもさわやかで、心地よい。足元には点々と黄色い花が咲いていて、道案内されているような歓迎されているような、歩く僕らをとても楽しい気分にさせてくれる。道は頂上付近の峰沿いに10分程度で窪地の周りをぐるりと一周する、いわゆるお鉢めぐりコースになっていた。

夕方、夕食の前に再び池之沢を訪れ、サウナに入って出てくると、辺りは暗くなり、空には満天の星が輝いていた。周りをぐるりと外輪山に囲まれたカルデラの中から見る星空はとても美しくてどこか幻想的な風景だった。

宿の夕食は他の宿泊客と一緒に大広間でいただいた。次々と用意される食事のボリュームには圧倒されたがどれもおいしく、他のお客さんとの会話も楽しい。そんな話から、いろんな島の情報を得ることもできた。

お客さんの中には、プラネタリウムで上映する動画素材として青ヶ島の星空を撮影しに来ているTさんもいた。夕食前に撮影ポイントにカメラを設置して自動で撮影を行っているということだった。その話を聞いた僕らは、Tさんが深夜にカメラチェックをしに行く際に、一緒に連れて行ってもらうことにした。

青ヶ島には、サウナのある池之沢や、島の北端のジョウマンなど、星空スポットがいろいろあるが、僕たちが向かったのは尾山展望公園だった。青ヶ島は近年、星空観測ポイントとしても有名になってきているのだが、たしかに素晴らしい星空だった。絶海の孤島である青ヶ島は、東京から約360km、最も近い八丈島からも約60kmの距離にある。つまりこの島を中心にした少なくとも半径約60km以内には人工の光がほぼ存在していないということだ。そう考えるとこの島の星空の美しさにも納得がいく。

 

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しばらくみんなでその素晴らしい星空を眺めた後、僕以外の同行者はみんな、Tさんと一緒に移動することになった。僕はひとりでその場に残り、もう少し星空を撮影することにした。真っ暗な中でひとり残るのは少し心細くもあったが、星空のインターバル撮影を始めてしまっていたのでもう少し撮影を続けたかったし、この星空の中にひとりでいる気分というのも味わってみたかった。

みんなが行ってしまってひとりになると、あたりはしんと静まり返った。ひとりになってからしばらくは、やはり少し心細かった。目が暗さに慣れて辺りが少し見えるようになったタイミングで心細さを紛らすようにゆっくりと体を動かしてみる。ストレッチをするように体の筋を伸ばしてみると気持ちがいい。

今日は結構ハードに移動を繰り返していたので、それなりに体も疲れているはずだ。体の声に耳を澄ませるように意識しながら、体の筋をひとつひとつ丁寧に伸ばしていく。

同時にその場の状況をひとつひとつ確認してみる。ここは一応は整備がされた展望公園で、柵を越えてむやみに崖に近づくようなことをしなければ別に怖がる必要はないはずだ。特に危険な動物がいるような話も聞いてない。もう11月下旬だが上着を着ていれば寒さを感じることはなく、むしろとても心地よい。夜露で地面が濡れるほどの湿度の高さもどこか安心感を与えてくれる。そして空にはどこまでも美しい星空が360度全開に広がっている。

体の筋がほぐれると心細さもすっかり解消されていた。地面は夜露で濡れていたが構わず地面に座って空を見上げた。ぼーっと星空を見ていると流れ星が次々に流れていく。あまりたくさん流れるので流れ星に“お願い”しようと試みる。たくさん流れ星が流れていても、星が流れる一瞬に「3回願いを唱える」のは難しい。

トライアンドエラーを繰り返し、試行錯誤しながら“願い”をそぎ落し、極シンプルにする。そして、いつでも唱えられるようにその極シンプルな願いを常に心に思い続けている状態になれたときに、ようやく流れ星に“お願い”できた。

 

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どこかでニワトリが鳴いた。時計を見ると午前3時前。ニワトリは朝に鳴くというイメージだけど想像以上に早い朝に鳴くんだなと思いながら、そういえば以前にもどこかで同じことを思ったことがあるような気がした。それがどこだったのかはまったく思い出せそうになかったけれど。

村田さんと2人だけで孤島に泊まることを心配していたことなど、この頃にはもうすっかりと忘れて心から青ヶ島を満喫していた。そもそも“その夜”は、もうまもなく明けようとしていた。

 

 

 

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