アイキャッチ0315_圧縮

アオガシマトリップ#005「東京都青ヶ島」

2015.05.14      Translation of author 日本語

 

大凸部を満喫し集落に戻った僕らは、村の集会場へ行ってみることにした。そこでチャリティーランチが行われていると聞いたのだ。

集落のほぼ中心地にある集会場は、とても人口170人程度の島のそれとは思えないほどに立派で近代的な建物だ。隣接している小中学校や体育館なども、思いのほか立派。それらの設備の充実はこの島が東京都であることと無関係ではないように思われた。

集会場には島の人々や観光客がたくさん集まっていた。“絶海の孤島感”を満喫していた大凸部から、いきなり近代的な建物の中、たくさん人がいる空間に来たのでちょっと戸惑ってしまった。最初はどうしていいのかよくわからなかったが、ランチに来たことを思い出し、とりあえずランチを買って食べてみることにした。

販売されているランチを見ると、おにぎりや焼きそばなど特に珍しくはなさそうだ。その売上げが何かのために使われるということだろうとは思うが、周りの空気を読むのに忙しかったこともあり、チャリティーの趣旨を確認するのは忘れてしまった。

ランチを売っている“島の人”も、ランチを買って食べている“島の人”も、“東京にいる人”と大きな違いは感じられない。話している言葉はほとんど標準語のようだ。想像していたより全体的にずっと年齢層が若い気がする。おじいさんやおばあさんもいるけど、子供もたくさんいて活気がある。

僕らがランチを買って食べていても別に干渉をするわけでもなく、特に珍しがられるわけでもない。人の距離感はまったく東京のそれと変わらなかった。

そんな人の距離感にむやみに踏み込む勇気はなかったので、特に“島の人”と交わることもなく普通にランチを食べ終えた。

 

566A8821

 

いまいち島コミュニティの空気感になじめないまま集会場をあとにした僕らは三宝港を目指してみることにした。集会場のある集落は島の北西部にあり、三宝港は島の南西部にある。少し前までは直線距離の近い島の西側を回る道路で集落から三宝港まで行くことができたようだが、現在、西側を回る道路は一部が崩れているため通行できない。レンタカー屋のご主人からは「西側はキケンだから、東側を回ってトンネルを抜けて行くように」と聞かされていた。僕はその言葉に従ってとにかく東に車を向けた。

大きな道路を東に向かってに進んでいくと、右手にババロアのような内輪山が現れる。外輪山に沿って伸びる道路は島の東側に弧を描くように東から徐々に南に向きを変える。そのまま道路を進んでいくと「平成流し坂トンネル」が現れた。崖の上にある少しさびれたような独特の雰囲気が漂うそのトンネルをこわごわと抜ける。そこから道路はUターンをして、今度は左手に内輪山を見ながらカルデラの内側へと下りて行く。

トンネルを抜けカルデラの中に入ったところでがらりと空気感が変わった気がした。風が弱まり、気温や湿度がちょっと高くなったように感じられる。青々と茂る植物はジャングルと言うほどうっそうとはしてはいないが、東京では見ることのできない植物も多い。どこか亜熱帯っぽい独特の景観だ。全体的に“緑が濃い”。

 

566A8302

 

初めて感じる不思議な雰囲気を楽しみながら車を進めて行くと、今度は「青宝トンネル」が現れた。こちらは比較的新しそうだが、とにかくセメントでガチガチに固めてあるイメージだ。ちょっと強引さを感じるほど直線的で迫力がある。これもまた独特の雰囲気のトンネルだ。そのトンネルを抜けると再びカルデラの外側に出る。そしてまたがらりと空気感が変化する。一気に視界が開けて海に出るのだ。海といってもとんでもない崖の上から見下ろす、ちょっと腰が引けてしまうような海だった。

 

566A8298

 

思わず車を停め、崖の上からの眺めを楽しんでいると、工事車両が入ってきた。車を移動して港に下りる。風が強い。視界が広すぎてスケール感がつかみにくいが、ゆらゆらとうごめく海は結構うねりがあるようだ。光のコントラストが強すぎて最初は気が付かなかったが、よく見ると埠頭で釣りをしている人も何人かいる。背後を見上げると立ちくらみがしそうなほど高度のある直立した断崖。その断崖の広い範囲がコンクリートで塗り固められている。高架橋が入り組んだ複雑な構造の港は海側から見るとまるで要塞のよう。こんなにインパクトのある港を見るのは生まれて初めての経験だ。

 

566A8310

 

コンクリートで強引に固められた港から感じる、自然に対して真っ向から対抗しようとするような人間のパワーも、やはりこの島が東京都であることと無関係ではないように思われた。

海側からその港を見上げるときに、僕は恐怖心のようなものを少し感じた。それは厳しい自然に対する畏敬の念みたいなものなのか、そこに真っ向から対抗しようとする人間の行いに対してのものなのか、単純に断崖の高度によるものなのか、その時はよくわからなかった。

 

566A8307

 

もしかしたらその全てが入り混じりながら、その場にぽつん置かれた自分自身の小ささを感じることによって生まれた恐怖心だったのかもしれないなと、今思う。

 

 

 

 

【series】 アオガシマトリップ index