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アオガシマトリップ#003「数十年ぶりのヘリコプター」

2015.04.30      Translation of author 日本語

 

そんな風に始まった旅だったが、ヘリコプターに乗り込むと一気にワクワクとした気分になり、自然とトリップ感が高まった。

いきなりのハプニングスタートだったので実際に乗り込んでみるまでそのことを意識するタイミングが無かったけれど、八丈島からはヘリコプターに乗って青ヶ島へと向かうのだ! 普段外を歩いていても音が聞こえるとつい空を見上げてその姿を確認しようとしてしまう、あのぺリコプターだ。僕がヘリコプターに乗るのはたぶん小学校の頃、自衛隊のヘリコプターに乗せてもらって以来のはずだ。

その時はなにかの記念日だったのか、実家のある名古屋市守山区の自衛隊駐屯所で地域の住民に駐屯地を開放するイベントを行っていたのだと思う。その催しの一環として地域の子供であった僕が自衛隊のヘリコプターに乗せてもらえたのだろうと想像するが当時の自分は幼すぎてその時の記憶はあいまいだ。ただヘリコプターでの飛行中、まともに話ができないほど大きな音がしていたことと降りるときにプロペラからの風圧がすごかったことだけは、なぜかはっきりと思い出せた。

 

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そんな記憶をたどっている間にゆっくりプロペラが回り始めた。八丈島空港のスタッフがプロペラから発せられる風をまともに受けながらも笑顔を作ってヘリコプターに向かって手を振っている。ちょっと無理をしている感じがなんだか可笑しい。その様子を眺めながらどこか安心感みたいなものを得ている自分がいるのも、また少し可笑しく思った。

ふわっと浮き上がるのをイメージしていたがヘリコプターはゆっくりと滑走路を走行している。えっ!?ヘリコプターって走るんだっけ?と意外に思っているとふわりと浮上し、みるみる眼下の八丈島が小さくなった。

ぐんぐん上昇をしていくときには若干緊張してしまったがその飛行は安定していてすぐに心に余裕が生まれた。ヘリコプターの中は子供の時の記憶と同じようにとても大きな音がしている。うるさくて人と話をすることもできそうにないので僕は思いっきり自分の世界に入り込んで周りの景色や機内の状況を楽しんだ。

 

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旅で乗り物に乗っている時間は好きだ。みんなでワイワイもいいけど、こんな風に音がうるさかったりして完全にひとりの世界に入り込む移動時間は大好物だ。窓の外に流れる風景を眺めながら、自分自身と対話をしたり、ゆっくりと考え事をしたり、妄想の世界に入り込んだりして、至福の時を心底楽しむ。体が空間的に移動するのに合わせて心も精神宇宙を移動するということなのか、こんな時間には自分自身の中に日常生活では得られなかったいろいろな発見をすることも多い気がする。

島の人だろうか、30歳位と思われる男性がひとり後部座席に乗り込んでいた。ヘリコプターが怖いのか、島に行くのが憂鬱なのか、それともそういう顔なのか、やたらと表情が暗い。なにか本土でとんでもないことをしでかして島に逃避しようとでもしているのだろうか、と妄想してみる。気になって少し観察してみたが、表情が暗い以外には特におかしなことはなく、おとなしくうつむき加減で口元に手を当て窓から外をじっと見ている。

機外の景色を追ってきょろきょろと視線を動かす旅行者とは違い、ある意味でその行動には迷いがない。他の乗客のことを気にすることもない。機内の様子にもまったく興味は示さない。視線は遠くを見つめたままだ。島の出身者かどうかはわからないが、少なくとも一定の期間は島に滞在している(もしくはしていた)人でヘリコプターでの移動にも慣れているということなのだろうか。よくわからないけど、別に害もなさそうなのでその男のことを気にするのはもうやめにした。

その男性の表情とはまったく違い天気はすこぶる快晴だ。海上はとても明るく見晴らしもよい。上空から青ヶ島を撮影することはできるだろうか。青ヶ島の代名詞である“2重カルデラ”を撮影するのであれば、きっと上空から撮るのがベストなはず。撮影しやすいルートを飛んでくれるといいのだけれど…。

そんなことを思いながらカメラにマイクを装着する。強い太陽光がきらきらと反射している海上の明るさにあわせてレンズのフィルターを濃いものに替え、入念に露出を調整する。そして、ヘリコプターの向かう先に島を探した。

ほどなくして、ヘリコプターの進行方向に島影が見えた。島影から推測すると想定していた以上にヘリコプターの飛行高度は低そうだ。この角度からではイメージしていた絵は撮れそうにないなと思いながら動画撮影モードにセッティングをした一眼レフを島影に向けた。瞬く間に島影は大きくなってくる。

 

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大海原の中から直立するその島の周囲の断崖が近づいてくる。むき出しになった地層がやけに目につく。その断崖は雨や風に浸食された感じがあまりしない。ついさっき土砂が崩れ落ちて地層がむき出しになったかのようであり、かつ鋭利な刃物で大地がスパッと切り裂かれたかのように、痛々しくて生々しいのだ。

そんな島の周囲の断崖の険しさに目を奪われていると、ヘリコプターはすでに島の上空に在り、眼下に集落が流れていく。ずいぶん低空で集落の上を滑空するんだなと思っていたら、そのまますんなりとヘリポートに降り立った。

午前11時前。いろいろありながらも、あっという間の青ヶ島への到着だった。

 

 

 

 

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