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アオガシマトリップ#001 「波乱の離陸」

2015.04.16      Translation of author 日本語

 

「あ~~~…すいません!今羽田なんですけど、いや~なんか…飛行機に乗れないみたいで…すいません。追いかけますから先に行ってください!すいませんっ!」

いつもよりずいぶん早起きしたためか、ぼんやりしていた。そんな脳みそを少し活性化させようと羽田空港の搭乗口前のベンチに座りたいしてうまくもない缶コーヒーを飲んでいた。そこへカフェインどころの騒ぎではない刺激的な電話があって、僕は一気に目が覚めた。

「……え!? どういうこと?」

僕と井島さんと村田さんの3人で行くつもりだった青ヶ島への2泊3日の旅が、波乱のスタートになった瞬間だった。

 

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前日まで仕事に追われていたこともあり、きちんと空港内での待ち合わせ場所を確認してはいなかった。ただ“Eチケット”を2人にメールしてあったので、搭乗口で待っていれば2人とも来るだろうと僕はたかをくくっていた。そして、思った通り村田さんは搭乗口に到着し、2人で井島さんを待っていたのだ。

しかし、(後で知ったのだが、)井島さんはチェックインカウンター前のロビーで僕と村田さんを待っていたらしい。そうしている間に搭乗時刻が迫ってしまい、「今からではチェックインをしようとしてもさせてくれない」という、ちょっとした修羅場的な状況にある井島さんからの電話であった。

時計を見ると搭乗時刻まではまだ十分な時間があった。だからその時でも僕はまだ何とかなるだろうと思っていた。そして、搭乗口から保安検査場まで戻ってみたり、搭乗口で事情を話して交渉してみたりもした。しかし航空会社の職員はみな驚くほどにマニュアル的で頑なだった。

「乗りますか、それともお客様もキャンセルされますか?」

最後まで搭乗口の航空会社職員に交渉を試みていたのだが、これ以上遅れると僕ら2人も搭乗できなくなると言われ、機械のように質問された。業務上仕方がなかったのかもしれないが、それまでのやり取りなど一切なかったかのようなその態度はあまりにもシュールで思わず吹き出しそうになってしまった。

 


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(※画像はイメージです。)

 

なすすべなく僕と村田さんは2人で八丈島行きの飛行機に乗り込み、結局、井島さんは搭乗することが許されなかった。

普通の旅なら、飛行機に乗り遅れるくらいのことは「やっちゃったね」程度のことだ。そんなにたいしたことではないかもしれない。ただ今回の旅に関しては、井島さんが乗り遅れてしまうことは、単に井島さんの旅程が遅れるというだけの意味ではなかった。

期待している写真家・井島健至が撮影する青ヶ島の写真を見ることができなくなる可能性があることももちろん大きな問題だった。そして、まだほかにも問題はある。

僕と井島さんはよく酒を飲み一緒にテント泊の山登りなどもする気兼ねのいらない関係で、井島さんと村田さんとも旧知の仲だ。でも僕と村田さんとはそれまで1度しか会ったことがない。しかも妻子持ちのおっさんである僕に対して、村田さんは独身の女性なのだ。

別に村田さんに異性として特別な意識を持っているわけではない。一度しか会ったことはないが村田さんがしっかりとした女性なのはわかっているので大丈夫(←なにが?)だとは思う。とはいえ、ほぼ初対面の女性と2人きりで、絶海の孤島と言われる青ヶ島に泊まりで旅行というのは…いろいろと考えものだ。僕はまあいいとしても、村田さん的に大丈夫なのだろうかと心配もした。そして、僕の家族はどう思うだろうかとも考えた。

この便を逃すと次の羽田発-八丈島行きの飛行機はお昼過ぎにしかない。そして、その便では八丈島から青ヶ島に向かうヘリコプター(1日1便)にも定期船(1日1便)にも連絡できない。つまり、この便に乗り遅れた井島さんは、今日中に青ヶ島に着くことはできず、それは少なくともひと晩は僕と村田さんが2人だけで絶海の孤島・青ヶ島に泊まることになりそうだ、ということを意味していた。

ならばいっそのこと、僕と村田さんも今日の青ヶ島行きをキャンセルし、3人一緒に八丈島で1泊するという選択もあるかもしれない。ただし、その場合には、明日の八丈島から青ヶ島への移動手段を3名分確保する必要がある。明日のヘリコプターのチケット3名分を今から取るのは不可能だろう。定期船のチケットは取れると思うが、就航率が低いことで有名な定期船だ。明日、予定通り運行されるかどうかはわからない。2度のキャンセルを経て3度目のトライで向かう青ヶ島なのだから、ここまできて上陸できないという事態だけは絶対に避けたい。

やはり僕らは2人で先に青ヶ島へ向かおう ――――――。

 

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乱気流の中にいるように…と言うといくぶん大袈裟だけど、そんな風に揺れ動く思考に振り回される僕とは裏腹に、エアバスはきわめて順調になめらかな飛行を続けている。

眼下に伊豆半島が現れ、その先にうっすらと富士山が見えていた。そういえば伊豆半島はフィリピン海プレートに乗ってその昔フィリピン沖から北上してきたそうだ。そして、アジアプレートに乗っている本州にぶつかり今の地形になったのだという。その衝突によってできた火山が箱根や富士山ということらしい。つい数日前に何気なく見ていたテレビがそう言っていた。

富士山から伊豆半島へ直線を伸ばしたその先に点々と伊豆諸島の島々が連なっている。その最南端、ずっと南の海上にこれから向かう青ヶ島は在る。頭の中で来る前に何度か眺めた地図を思い浮かべながら位置関係をイメージした。まさしく絶海の孤島だな。

その昔、伊豆半島が本州に衝突したのなら、(それには膨大な時間を要するのであろうが)伊豆諸島の島々も、今後次々と本州に衝突していくということになるのかな。だとすると、その最後に青ヶ島が衝突するのだ。そんなことをぼんやり思った。

そしてまたリアルに戻って思案する。僕らが2人だけで先に青ヶ島に行くとすると、実際のところどうしたら井島さんは僕らに合流できるのだろうか、と。そのために何かできることはないのだろうか、と。

 

 

 

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