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リシリレブン#005 「穏やかな瞳」

2015.01.24      Translation of author 日本語

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鷲泊からフェリーに乗って香深という港に着いた。礼文島の港町だ。礼文島は円形の利尻島とは対照的で、縦に細長い島で香深は島の南東の場所にある。僕らはレンタカーを借りて島の最北端にあるスコトン岬を目指すことにした。最北端を目指すことに特に意味はなかったが、「スコトン」という地名の響きにただ導かれて目指してしまった。

香深から北に海岸線の道を北上していく。北部の船泊の集落に着くまでにいくつかの集落があって小学校や社寺仏閣も見られた。香深と船泊のちょうど間に高校がある。島に高校があるかどうかは島を見定める一つの基準であり、やはり高校のない島には本当に若者がいない。高校進学とともに島を離れ、たいていの人々は島に戻ることは少ないという。そういう意味で、礼文島は高校のある貴重な島だ。

点在する集落の間にもパラパラと民家が存在する。それらは背後に急峻な崖を背負った土地で、目の前は海だ。そういう家の作りを眺めていると、たいていは漁師と思われる作りの家で、海に面して住まうことは何より効率的な配置である。とはいえ、海と崖に挟まれた家となると、なかなか自然環境の厳しい土地と推測されるが、このような土地にも人は住み営みを行っていると思うと敬意を評してしまう。

海岸線の道から途中少し高台に上がった道に出ると、礼文島らしいお花畑のような景色に出逢った。それは薄く霧がかっていて幻想的だった。霧の向こうに望む利尻山を見ていると礼文島に来たんだという実感が湧いた。

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その日に見た礼文の風景は二つあって、どちらも礼文島らしい景色だったと思う。一つは高山植物の可愛らしい景色で、これらの植物を見たくてみな礼文島を目指してくる。僕らの訪れた7月上旬は花の盛りの落ち着いたころだった。一面の草原に色鮮やかな植物が点在する姿は、印象派の西洋画のようで眺めているとたちまち心が踊るようだった。雲の影から指し込む太陽光は、スポットライトのように島を照らし、そのするどい太陽光に花々がキラキラと反射する様は、強く僕の脳裏に焼き付いた。そして、その鮮やかな色彩は利尻島とは対象的で母性を感じる温かい香りがした。

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もうひとつの風景は、高山植物の温かい感じとは対照的でどこか雑多で侘しい景色が見られた。

僕はスコトン岬で寂しそうに佇むカラスに出逢った。そのカラスは岬の展望台の脇道を降りて海岸線へ近づいたところにいた。そのカラスは都会でもよく目にするハシブトガラスで特に珍しい種類のカラスではなかったが、何かこちらに訴えかけるような眼差しで僕を見つめてきた。その水辺には壊れた番屋の材木や漁で使わなくなったゴミがたくさんあった。大陸から流れ着いたゴミも多く打ち上げられていた。それらのゴミは人間の消費活動の中で発生した廃棄物で、自然に還るものとそうでないものが混在していた。

その分別されていないゴミの景色の中に僕とハシブトカラスはいた。僕があてもなくブラブラと岬の回りを歩いていると、カラスはある一定の距離を保って付いてきた。僕に興味があって付いてきているのか、僕が何かカラスにとって不都合なことをしていて追いかけているのか、はたまた他のカラスから見張り役を頼まれているのかわからないが、そのカラスと僕はスコトン岬をある一定の距離を保って歩いていた。

カラスの瞳を遠くからの覗いてみると、悪そうなやつには見えなかった。なかなか親しみやすい穏やかな瞳で、友達になれそうな気がした。そう思ったときにカラスは僕の前から飛び去っていってしまった。それはなんとも切ない瞬間だった。

 

 

 

 

 

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