リシリレブン#004 「リシリグレー」

2015.01.17      Translation of author 日本語

rishiri 4-1

リシリグレーとでも言うべきだろうか。その風景の彩度は消え、穏やかで滑らかなグレー色をしている。ハレの日を迎えた次の日の利尻の街並みはそんな色だった。街角に張られている自民党のポスターもまた日に焼けて色彩を失っている。そしてそれは「日本を取り戻す」と力強く主張している。その主張にどういう意味を持って作られたのか分からないが、この北の果ての島でそのメッセージを受け取ると軍国的な意味合いが増しているようで吐き気がした。その日は礼文島へ向けての移動日でフェリーが出航するまでの間、レンタカーを走らせて利尻島を見て回ることにした。

海岸線沿いを時計回りに走っていると、昆布の香りが車内にまで充満してきた。昆布の直売所だった。利尻島というと、はじめに思い浮かべるのが「利尻昆布」だ。この島に着いてから食事をする度に感じるのがこの昆布ダシのことだった。民宿で提供される食事の多くはこのダシがベースとなっていて、薄味だけれども奥深さのあるコクで日本人の身体に染み渡るようなホッとする味わいだった。

rishiri 4-2

街を眺めていると不自然な空地を多く見かけた。一面砂利で覆われていて、特に利用していることのない空地が島中にあったのだ。その空地の理由が、この直売所を訪れて理解できた。それは昆布を干すために必要なスペースでコンブ漁の盛んな時期になると一面に昆布が敷き詰められるのである。どうやら利尻島が閑散とした雰囲気を醸し出しているようにみえるのは、この砂利の空地のせいなのかもしれないと思った。

いくつかの集落をこえて、観光スポットであるオタドマリ沼に訪れた。沼の前に大きな駐車場が併設されていて、おみやげ屋さんが軒を連ねている。駐車場の隅には大勢で記念撮影をするための椅子や台が置いてあって、大型バスが到着してはそれらの小道具は活用されていた。おみやげ屋で販売されている絵葉書を見ると、沼の背後にそびえ立つ利尻山の四季折々の表情を見ることが出来る。なんとも快適ですべてが揃った便利な施設だと思った。とはいえ、そういった施設に魅力を感じる理由もなく、足早にオタドマリ沼を去ることにした。

rishiri 4-3

rishiri 4-4

利尻島の家はシンプルなものが多い。木造の平屋造りで切妻屋根がかわいい。壁材を横に並べてうろこ状に並べる工法は南米のパタゴニア地方で見た民家の工法と似ているように見えた。軒下で漁師の方々がウニを剥く姿を眺めていると、パタゴニア地方のプエルト・モントという街を思い出した。その街を訪れたときも同じように市場でウニを剥く姿をぼんやりと眺めていた。そのプエルト・モントという街も利尻島に似たようなグレーがかった街で、その映えない街の色が印象的だった。漁師さんの手仕事をぼんやりと眺めながら、そんなことを考えているとフェリー出航の時間が迫ってきていた。僕らはレンタカーを走らせて鷲泊を目指した。

フェリーに乗るとまたも空港でみた年齢層の旅行客が、揃って利尻山を眺めていた。カモメと戯れながら記念撮影をしている。そして、その記念撮影はいつまでも続いた。

rishiri 4-5

 

 

 

 

 

【series】 リシリレブン index