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ヤエヤマトリップ#005 桃源郷(波照間島)

2014.10.23      Translation of author 日本語

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ビーチでぼんやりと過ごした後、僕らは宿に戻り一休みしていた。
僕はゆんたくで、それまでの島の記録や記憶のメモの整理や、地図を眺めながらその後のプランを妄想していた。
旅に出ている間は、地図や現地でなんとなく手に入れたフライアーを眺めながら、次に行く目的地のことを想像する時間が楽しい。

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すると、宿のおじいの同級生(以下、Kさん)が泡波を片手にやってきた。
訛りの激しいその言葉に強烈な興味を覚え、手元で動かすメモは散漫になっていることに気がついた。
僕があまりに泡波を飲みたそうなオーラを出していたのか、Kさんは「飲もう」と声をかけてきてくれた。

僕は「ありがとうございます!」の一声で、手帳をしまい泡波を頂いた。

目の前には泡波の三合瓶がある。

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なんとも幸せなひとときだ。西表島で見た泡波の三合瓶は5000円もした。
それを都内で買うと1万円はくだらないという。
これだから、ゆんたくはやめられない。僕は、Kさんと宿のおじいの話を肴に泡波を飲み続けた。

Kさんの眼力はすごく強い。
身体も大きくて、少し毛深かったようにみえた。
その風貌は、北海道の二風谷で出逢ったアイヌのおじいちゃんと似ているように思えた。
遠くはなれたそれぞれの土地で、何かしら似た共通項を発見するとゾクゾクとしてしまう。

Kさんから放たれるエネルギーは強烈で、そのインパクトに僕は吹き飛ばされそうだった。
でも、そのエネルギーに魅力を感じている自分がいて、どこまでもその話についていくことにした。

Kさんは、幼少を波照間島で過ごし、宿のおじいとは中学まで同じ学校で過ごした仲だという。
その後は石垣島に移り住み、今も石垣島に住んでいる。Kさんの額には、イボのような膨らみがあり、それは第三の目をもった宇宙人のようにも見えたし、悟りを開いたブッタのようにも見えた。
泡波をしこたま飲みながらKさんの話を掘り下げた。幼少からの現在に至るまでの話、波照間島のこと、沖縄のこと、泡波を肴にさまざまな会話がゆんたくには飛び交った。

その中で一つとても興味深い話があった。それは、かつては波照間島は森に覆われた島だったという話だ。

確かな資料や文献を解読した訳ではないので、どの程度の信頼性があるかどうかは分からないが、言い伝えとして聞くには実に興味深い話だった。

波照間島を眺めてみると島の大半はサトウキビ畑に覆われている。
それは沖縄らしいのどかな風景だし、そのさとうきびが波照間島の産業として成立しているからこそ、島で生きることが出来ているのだと思う。
しかし、このさとうきび畑は政策的に整備された産業のようで、ある時に島に区画整理事業が施され、さとうきび畑ができたと言う。

確かに、島には直線的に取り残された森を見かけることがある。この森は、聖域として島人から崇められた場所で、いまでも手付かずの自然が残された貴重な波照間の野生であると言える。
その取り残された森を眺めていると、かつて繁栄した波照間の聖なる森を想像してしまった。
かつての波照間は、美しいビーチと聖なる森からなる桃源郷として存在していたのかもしれない。

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幻の泡盛と共に幻の波照間ナイトは幕を閉じた。
ゆんたくには数本の泡波の空き瓶が転がり落ち、初夏らしい少し肌を刺激する風が吹いていた。

波照間島の強烈な迎い酒の洗礼を受けた僕らは、静かに床についた。

 

 

 

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